第11話 夜と昼では脳の判断力が違う

 

夜中に渾身の激情を書きつらねたラブレターを朝になって読み返すと途端に恥ずかしくなって投函するのをためらう・。 それはなぜなのか? 人間の脳は理屈や理性、道徳などで判断して自分を抑制コントロールする他の動物にはない特性があるがこれは自分が自分を理解して制御している「顕在意識」であり、おでこの頭蓋骨裏にあるので『前頭葉』と呼ばれる処の働き。処が人類が成長する過程で動物として或いは本能として生きる能力も必須で生理的欲求の本能を司る『潜在意識』は脳全体の8割を占めている。つまり野獣と同じ本能部分が80%あり、人間として抑制している自我が20%。潜在意識は頭蓋骨の中央下部にある大脳辺縁系といい生理本能的感情を動かしている。あの人が何となく好きとか嫌いとは思うのはこの本能が理屈抜きに感知する潜在意識部分。「理屈ではお前の言う通りだがこの野郎、腹が立つ」となるのは理屈の顕在意識では理解しなくてはならないと分っていても潜在意識の本能、本心では許したくないという現象だそうです。「今きちんと勉強しておかないと良い大学に入れないから遊んでいないで勉強しなさい」と言う母親の説得がうまくいかないのもこれで、分っちゃいるけど・・・・の矛盾だそうです。 処がアルコールが入ると理性のフィルター役が酔っぱらって作動しなくなり本能むき出しになる。大人としての対応が外れて潜在意識が遠慮なく出てくる。酒だけではなく実は、闇も同じ効果がある。理性をはぎ取って人々の本能を焚きつけて扇動することが可能になる。ヒトラーは国民や兵士を集めての演説は必ず夜に行った。昼は脳がはっきりと覚醒していて人は理詰めで判断するため少しでも論理的におかしなことを言うと直ぐに拒否反応を示す。だから昼間の仕事で脳が疲れたところを見計らって夜に人を集める。 次に勇壮な音楽、特にヒトラーはワグナーがお気に入りだったので、それを奏でる。群衆の皆の理性が完全に麻痺する流れを創る。そこで身振り手振りを交えた力強い自信に満ちた派手なパーフォーマンスを行い、同志や部下たちの兵隊たちに次々に拍手の嵐と声援を送らせて、雰囲気を高揚させる。人々との感情に訴えかけ民衆の魂を洗脳して国民的洗脳をかけ、国をも動かせるようになったのである。こう言う仕掛けだからヒトラーがかなり筋の通らないことを言っても、人々の脳はなかなか異議を感じることができないで、すっと通過させてしまうことになる。この脳生理学を巧みに応用して作戦を立てたのは宣伝担当相のゲッペルスだった。連合国側も負けじと音楽作戦をとり『リリー・マルレーン』を謀略放送で流してドイツ兵の心を撹乱しようとしたが脳の研究とそれを戦争の作戦に用いる手法ではナチスの方が数段も上だった。 いずれにしても説得の技術には音楽やダンスなど心地よいリズムが有効である。昔から女性を口説く時はお酒を飲み、ダンスホールで音楽のリズムに合わせて、低い声でささやくのが一つのパターンみたいになっているがそれは理にかなっていることである。もちろん、闇と光の幻想的な演出は必須。音楽と照明の全くない舞台での踊りがどれほど無味乾燥か想像するだけでしらける。

歌舞音曲を使って説得を試みる話は我が国の神話にもある。以前お送りした「面白い」の語源に拘わる高天原の天照大神の話。この時に踊っていたアメニウズメノミコトは芸能の祖と言われるがむしろ説得の技術を用いた元祖と言える。この様に酒、音楽、夜などの三点セットで脳を麻痺させて困難な説得を成功させようとする試みは古来から行われてきて訳です。従って誰かがこの設定の中で何かを訴えかけてきたら自分を説得しようとしていると注意した方が良い。さもないと相手の意のままにされてしまう。逆もまた真なり。相手を口説こうと思ったら『酒・音楽・夜』を大いに活用すること。但し、心配事は寝る前に考えてはいけない。寝る前にやることは「今日楽しかったこと、嬉しかったこと」を懸命に考えながら寝ること。そうすれば必ず運命は「最幸」のものになるはず。 

以上です。如何ですか。少しは「為になりましたか」。ヒットラーの話などは納得かありですね。更にドイツ語は聴く人間を鼓舞する演説に向いた言葉でもあると思います。「酒と音楽と夜」を大いに活用しましょう。もう遅過ぎるかも知れませんが最後の挑戦として・・。唯、相手がいれば、ですが・