第1話: 紅茶の国 英国物語

知人から届いた紅茶の話でロンドン駐在時代を思いだしました。

『飲みたい紅茶ブランド』というアンケート調査の結果、1位はフランスの老舗「フォション」で約7割の人が飲みたいと答えました、特にアップルティーは定番商品だそうです。2位は英国の「フォートナム・メイソン」で英王室や貴族らに愛飲されて上品で伝統的な味で紅茶文化の象徴でもありブレンドの技術は世界一と定評があります。因みに我が家はロンドン駐在以来、フォートナム派です。以下3位はハロッズ(英)、4位はウェッジウッド(英)、5位 ロイヤルコペンハーゲン(デンマーク)、6位 トワイニング(英)、7位 レピシエ(日本)、8位 マリアージュフレール(仏)、9位リプトン(英)10位 ミントン・ティー(英)だそうです。流石に紅茶の国、英国が6社入っています。因みに英国のコーヒーほど不味いものはないと思います。煮込み過ぎるのか煎じ茶の様で「コーヒーをマズく入れる技術は世界一」と揶揄されています。 

紅茶にはブランドの他に産地による茶葉の違いもありダージリン(インド)、アッサム(インド)、ウバ(スリランカ)等々がありますが同じダージリンでも農園や収穫時期によって香りや味は大きく変わってきます。フランスは果実や花の香りを加えたフレーバーが得意ですが英国は伝統的なブレンドが得意です。更に英国にはアフタヌーン・テイーと言ってサンドウッチ、スコーンと呼ばれるビスケットの様なパン?にジャムと独特のクリームをたっぷり塗って紅茶と共の午後のひと時を優雅に過ごす習慣があります。特に季節が良くなった新緑の季節に庭先にテーブルを出してこのアフタヌーンテイーを楽しみながら友人との他愛のない会話は正に悠々たる英国ならではの習慣です。日本では紅茶はストレートかレモンを入れて飲む人が多いと思いますが英国ではミルクティーが一般的です。ミルクを先に入れるか、後から入れるか。未だに英国では決着が付かず延々と持論を展開しながら午後のひと時を過ごす。せわしい今の世の中で貴重なる習慣かも知れません。因みにミルクを先に入れてそこに熱い紅茶を注ぐのが一般的には多い飲み方です。 

 そのロンドンに30歳から4年間駐在をしました。1歳半で渡英した娘は近くの幼稚圓に入ります。言葉も何も分からない彼女は戸惑いもあったのだろうと思います。「座りなさい」と言われると日本では正座をしますが英国では胡坐を掻きます。流石に女の子が胡坐は・・と直すのに苦労をしました。仕事で夫婦で夜出掛ける事が多くありました。その為に前任者から引き継いだイギリス人のお婆ちゃんを頼みました。最初に夫婦で出掛ける時に娘は親に捨てられると思ったのでしょう・・・窓の処で大泣きしながら飛び上がっているのを後ろ髪引かれる思いで出掛けた事を今でも忘れません。娘は気丈にもお婆ちゃんが来ると行ってらっしゃいと送り出す様になりました。語学は耳なら覚えるのが一番です。ある時、私の英語を発音がおかしいと指摘する様になりました。

そして忘れられない我が家の貴重な経験談。我が家の長男、啓介はロンドン生まれです。英国ではホームドクター制度が充実しており普段は掛りつけの医者に診て貰い必要に応じて大病院に行きます。出産は特段病気ではありませんし家内二度目ですから自分である程度は判断できました。そろそろかな、という時に隣り町にある大きな病院に入院しました。日本と違って出産に亭主が立ち会うのは義務です。以前会社の後輩奥様お産の時に事があるので生まれる前に会社に戻ろうとしたら医者と看護婦に取り囲まれ「本当に帰るのか!」と凄まれたそうです。段々迫る陣痛に肩で息をする女房の手を握りながら励ます位しか亭主には出来ません。時々現れるマレーシア人の見習い看護婦は脈を図るだけで出て行ってしまいます。夜になり病室に医者と看護婦が顔をしました。イタリア人の出産を終えたとかで「GOOD LUCK」と言って帰ってしまいました。結局見習い看護婦を呼んで3人で分娩室に向かます。見習い看護婦の「PUSH,PUSH」(リキメ、リキメ)の声と共に息子の頭が少し出てきました。その頃に初めてイギリス人の正規の看護婦が分娩室に現れます。そして無事に出産。あんなに疲れた事はありません。何故赤ん坊をミドリ子というのかが初めて分かりました。羊水に浮かんでいる子供はミドリ色です。それが大気に触れと物の見事にぱーと肌色に替わります。正に赤ちゃんとはここから来たのだと感動した事を覚えています。生まれたばかりでまだへその緒が付いたままで啓介は家内の腕に抱かれました。母親が子供が可愛くてしょうがないのはこの事からも当然の事です。肩で息をする家内を見ながら看護婦が最初に放った言葉は「お茶にする、コーヒーにする?」でした。聴いてはいましたのでお茶と答えると正規の看護婦が病室を出て紅茶の用意しに行きました。その間、残った見習い看護婦がへその緒を切り体を脱脂綿で拭きます。日本では直ぐに産湯に入れるのでしょうが英国では脱脂綿で拭くだけで産湯は誕生して4ー5日後だと記憶します。紅茶を抱えて看護婦が戻ってきます。まだ肩で息をする家内を目の前にして皆でお茶を飲みます。「やれやれ、一仕事したねー」という事などでしょう。暫くの間、家内は貴方は良く悠々とお茶を飲んでいられたわね~と小言を言われました。

日本人のお尻には蒙古斑と言われる緑の痣があります。それを知らない看護婦から家内は幼児虐待の疑いを掛けられました。幸い日本人を良く知る医者の御蔭で容疑は晴れて無事退院出来ましたが。処変われば・・・の言葉の様に海外に出る事は違った習慣などを知る事の出来る良い機ですから大いにチャンスを見つけて世界に羽ばたいて欲しいと思います。